空間に自分を合わせる、か。空間を自分に添わせる、か。

もっとも「いま」の自分たちにあう空間へ。
ライフステージに合わせて再編集していく住まい。

水と緑の溢れる広大な公園を抜けた閑静な住宅街の中に、N氏の住むリノベーションマンションがある。氏は広告代理店勤務で、大手出版社に勤める奥様との2人暮らし。約120m2、1フロアに1住戸、さらに3方開口という贅沢な住まいを手に入れた。

「周辺で新築マンションも探しましたが、どれもラグジュアリーなデザイン・仕様で、私たちの趣向に合うものがひとつも無かったのです。」

趣向性だけではなく、112m2という大型の物件は新築では数少ない上、万が一あったとしても予算を大きく上回ってしまう。新築では叶えようのない住まいだった。室内空間においても、新築では叶えられない夢があった。

「夫婦共に、自宅でもしっかりと仕事ができるスペースを作りたかったんです。服や靴の量も多いのでそれら専用に設計した部屋も欲しい。さらに、将来的に子供部屋になる空間も2つ確保しておきたかった。」

これら全ての条件を満たす空間は、レディメイドのマンションには存在しない。あらかじめ用意された空間に自分たちの暮らしを合わせるのではなく、自分たちの暮らし方に住まいを添わせたい。そう、洋服でいう「ビスポーク」のように。体にしっとりと馴染み、あらゆる窮屈のない空間づくりが、リノベーションでは実現できる。

フルオーダーであることのメリットは他にもある。N氏が、将来子供部屋の一つにする予定の空間は、今のところあえて壁を設けずにリビングルームの拡張空間として使用している。「竣工」イコール「完成された住まい」である必要は無いと氏は考える。

「リビングを拡張した分の空間の使い途はまだ決めていません。将来は壁で仕切って子供部屋としますが今は何も無い空間のままです。住まいには1〜2年かけてじっくり考えてみる部分が残っていていいと思うんです。」

隅々までびっしりと誌面を埋め尽くしてしまったレイアウトは再編集しにくいが、余白を少し残したレイアウトは、状況に応じた並べ替えの可能性が何倍も広がる。全てを自分達の趣向や必要な機能で埋め尽くさず、住みながら徐々に考えていける空間を残しておいた住まいは、ライフスタイルの変化に柔軟に対応していけるだろう。そして何より、余白として残しておいた空間の可能性をあれこれ考えるという贅沢な夢も持てる。

N氏の住まいづくりは教えてくれる。住み始めの時が“完成形”という視点ではなく、あるテーマパークのように「常に“未完”であること」が、住まいの可能性を高め、暮らしに夢を与えてくれるのだ、ということを。

休日や夜に夫婦で使えるワークスペースを作った。

奥様は仕事の打ち合わせの電話で
リビングで寛いでいるご主人を、邪魔したくないという配慮。
ご主人は読書に没頭できる空間として。

洋服を引出しにしまい込むのではなく、一目で見渡せるよう、
ショップのような棚に整然と並べておきたい
…という思いから生まれた贅沢な空間。
身長差の大きいご夫婦二人とも使い勝手の良い大きな鏡も。
寝室とほぼ同じ広さを確保している。



専有面積/約112m2
建物築年数/20年